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2014年4月

2014年4月14日 (月)

1話-②「危ないリフォーム業者は存在するという過酷な真実」中編

前回までのあらすじ・・・信用していた業者に、工事代金を全額持ち逃げされたH様。その工事途中で止まった現場で私が目にしたものとは・・・

途中で止まった工事現場に、ぽつんとユニットバスだけ完成していました。
その様子は、広い空間にぽつぽつ立った柱の藪の中に置かれた大きな倉庫のようで不思議な景色でした。
そして、そこに取付られていたシャワーは、大きな水圧・水量を必要とする、中古マンションで使用するには注意が必要な「多機能シャワー」だったのです

「H様、このシャワーは大きな水圧・水量を必要としますが、説明はありましたか?」

「いや、全然」

「設計担当の人がいてもですか?」

「・・・」


H様の工事には、施工会社の他に設計担当者が関わっていたのです。

「ちなみに、図面にあるこの造作家具はどう固定するって言ってましたか? 頼るべき壁も無く、地震で倒れると危険です。またキッチンのオーブンなんかは、後方の壁との距離だと正面から使うのは厳しいですね。横からしか使えませんけど」

 別段、当初の計画にケチを付けるつもりはなかったのですが、パッと図面を拝見し、気になった点について、H様が納得していらっしゃったのか、知りたかったのです。

「う~ん、設計士か。彼からは図面について、具体的な説明も無かったし、こちらの意見より『これがいいんです』って感じだったからなぁ」

「元請けの施工担当は? 信用できたんですよね?」

「そうだね、でも『設計は、設計士に任せていれば大丈夫だって』感じだったしね」

「じゃあ、この図面の計画がH様の希望ではないのですか? 例えば、天井はぐるりと間接照明ですごく明るいですが、そこの照明器具だけで数十万円掛かってますよ」

「え? 何だって? 僕は天井を明るくしたくないんだけど」

 実はH様は、図面について詳細な把握も、納得もされていた訳でなく、仕上がりについては説明もないまま、進められている事が判明しました。
また、

「地震で倒れる造り付家具なんか駄目だね。何とかなんないの? キッチンも」

 そうおっしゃって、進められている内容の修正を求められました。私は、

「この図面は美しいですが、住宅の建築に詳しくない人の設計ではないですか?」

「ええ? でもK大の建築学科出た一級建築士で、プロフィールは良かったよ」

 私は驚くと同時に疑いました。
 確かに、見せて頂いたプロフィールは、申し分ないものでした。
 しかし、そもそも大学の建築学科などで、リフォームの授業など基本的には無く、建築士にも、病院の外科と精神科くらい得手不得手があるのが現実です。

 私は何よりH様の暗い表情が気になりました。

「これまでのリフォーム計画、楽しかったですか?」

 お金を使って自分の住まいを創造するリフォームは、仕方なく修理するリフォームと異なり、楽しいはずです。いや、楽しくなければならないと、私共は考えています。

「いいや、全然。楽しくなかったね」

 最悪の返答でした。

「このままいって、リフォームが楽しくなりそうですか?」

「無理だろ。設計士は勝手な事を言って、おもしろくなかった。元請け会社はお金と一緒に逃げる。工事は止まったまま数カ月。楽しめる訳がない」

 私は、だんだん落ち込んできました。

 H様は、今のお住まいや会話から、間違いなく「日常生活の楽しみを大切にされ、ライフスタイルを確立されている、ハイセンスな方」だと確信していましたので。

「全部、全部チャラにできますか? 『ねがいましては・・・』っていう感じで」

 突然、私は表現を構わず提案をしました。子供のころのそろばん教室のように、これしかない! と。

「逃げた業者は捕まえて、お金は取り戻すとして。このままという訳にはいかないので、これから『使える部分、やり直す部分を整理して』改めて進めるのはどうですか?」

「そりゃそうなんだけど、ちょっとリフォームには疲れたかな」

 H様の気持ちは当然だと思いました。自分なら、信用を裏切られ、大金持ち逃げされて平静でいられようはずもないからです。
しかし、このままという訳にいかないでしょう。計画中のリフォームも『リフォームすれば』(変な話ですが、すでに進んでいる範囲を残しながらも、改めるという、前代未聞の内容ですから)良くなりそうな感じもあります。
それに使えるものを使えば、費用も抑えられます。

「逃げた業者は捕まりそうですか?」あえて聞いてみました。

「弁護士に伝えて、しかるべき処置を取ってあるからね」

「途中になっているマンションのリフォーム、続ける気持ちと予算はありますか?」

「正直、厳しいけど、引っ越さなきゃならないし、仕方ないかな」

「私共は、H様に『リフォームやって良かった。楽しかった』と言っていただきたいのです。もし差支えなければ、私共がこの後を引き継いで、まとめましょうか」

 私は、何とかならないか? これでは、あまりにも残念な結果だと思ったのです。

「リフォームが楽しくなるかどうかは別にして、この計画、やり直しは効くのかな?」

 そうおっしゃったH様の目が鋭くみえました。

「何とか考えてみましょう。それに、お金・・・いや費用もこれから洗い直しましょう」

「う~ん、そう言ってくれるなら、賭けてみようか」

「私共は逃げませんよ。それよりむしろ、H様にとことん付き合って、楽しんでいただくつもりですが」

 こういう形で、私共が、前代未聞の問題解決リフォームを行うことになったのです。

 後日、H様から『弁護士と会ってくれ』という電話がありました。未来空間としての見積書と契約書、今後の方針や対応など、何だか『面接のような』感じでした。またその後、今度は『税理士に説明してくれ』と言われ、この時も費用に絡む書類などを持って伺いました。
私は、裏切られた信用の反動からだろう『仕方ないこと』と思い、対応していきました。

 それより、リフォーム後に「やって良かった」と本当に思っていただけるか?
 いまだに笑顔を見たことの無いこのお客様から、「楽しい」という言葉を聞くことができるのか?
 そちらの方が正直、心配でした。

・・・つづく

2014年4月 7日 (月)

1話-①「危ないリフォーム業者は存在するという過酷な真実」前編

H様の場合・・・・・信用という名の虚実、依頼先とお金の扱いは慎重に。


「えっ! 先に全額お支払いになったんですか? 失礼ですが、いくら位ですか?」

「あ、まぁ~ 高級外車2台ってとこかな」


 知人から『リフォーム業者が工事途中に逃げてしまって、困っている人がいる。何とかならないか?』と相談され、伺ったH様宅でのことです。
 逃げた業者は、どうやら預かったリフォーム費用を使い込んだらしく、行方不明とのことでした。
(高級外車って、1千万前後かな。逃げる? 本当にそんな事って起こるんだ!!)


 私は驚き、改めてH様に向かって、話を聞き始めました。

「でも、なぜ、そんな大金を? 契約金、着工金とか別けなかったのですか?」

「いや、別けたよ。最初に少し払って。それで設計士と打合せもしたし、工事も始まっていたしね。必要だって言うし、何といっても、その会社を信用していたからね」

「信用していた…ですか」


 この話はいまだに信じられないくらい、インパクトがありました。


 H様は、ご夫妻共いわゆる社会的地位も、収入も申し分のない位置にいらっしゃる方で、顧問弁護士も顧問税理士も付いています。しかし、業者が工事途中で行方不明という事実は、受け入れるしかありません。
 重々しい雰囲気の打合せでした。

「どのようなリフォーム計画だったのですか?」

「中古マンションを買ったから、そこを全部一新して、そちらに引っ越す予定で…」


 お話の内容から『ビンテージ中古マンションを買って、リノベーションして…』という感じの内容でした。購入され、工事が始まっているということは、購入代金は支払われ、住んでいないのに、住宅ローンの支払いや、管理費・修繕積立費が発生しているわけです。

「お引越しの予定は決まっているのですか?」

「いいや、でも、出来るだけ早く引っ越さないと。今住んでいる所を売りに出すから」

「どのくらい工事は進んでいるのですか?」


 私は遠慮なく話を進めました。放っておいても時間は過ぎるからです。


「・・・ おたくに依頼するかどうか、今は返事できないが、一度現地を見る気はあるかい?」


 H様はそうおっしゃいましたが、この時、私は仕事になるかどうかより、直面した問題の解決に、当社に役立つことがあるのか? そちらの方が気になっていました。ただ、このまま放っておく訳にもいかないとも思いました。


「ぜひ、拝見させてください。仕事も何も、そのような状況でしたら、実際にお役に立てるかどうか、こちらも見極めなければなりませんから」

 そのように申し上げ、後日、工事途中で止まった現場へ伺う約束をしました。



 それからしばらくして伺った現場には、逃げたリフォーム会社の下請けで働いていた人も来ていました。
(この人も、犠牲者の内に入るのかな)

 まだ冬の寒さを直に感じる現場に立ちながら、現状のチェックを始めました。

 幸い、計画段階の図面があり、当初の既存全解体スケルトン(躯体のみ)から一新するリフォームだと読み取れました。(最近はリノベーションともいう)


 工事が進んでいたのは下地段階でしたが、床のフリーフロア(浮床)と、壁の骨組み程度は出来上がって見えました。また、途中で止まった工事現場の中で、なぜかユニットバスだけは完成していました。
 その様子は、広い空間の中にぽつんと置かれた、大きな倉庫のようで不思議な光景でした。

 倉庫のようなユニットバスの中を覗き、すでに設置してあるシャワーを見たその時・・・

 思わず私は、ギョッとしたのです!!


・・・つづく

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